承前。

北京中心部から自動車で約1時間。感覚的にいうなら、50年前の日本の田舎といった風情なのですが、その一角を墓地として整備しつつあるのが、「涿州万佛霊園」です。総面積は10万平米で、東京ドーム2.3個分に相当します。

中国の霊園は大きく二種類、「公益性」と「経営性」に分かれます。これは字面通りで、公益性は公営で廉価、経営性は民営でややお金儲け主義的な霊園ですが、裏事情はいろいろあるそうです。ちなみに「涿州万佛霊園」は公益性です。後ほど紹介する経営性霊園と比較すると、規模も設備や見た目も相応に劣る印象は否めません。

それぞれの墓地は、「建て売り」方式で、名前の入っていない墓石が整然と並んでいます。身内の誰かが亡くなってから、墓地を購入します。その間に火葬し、墓の準備ができるまでお骨を納骨堂に安置し、その後、お墓の中に納骨するのだそうです。

中国の宗教事情はかなり特殊なようです。もともとは儒教や道教、仏教の国でしたが、1966~1976年までの文化大革命の時に、『マルクス主義に基づいて宗教が徹底的に否定され、教会や寺院・宗教的な文化財が破壊された。(wiki)』、そして『文化大革命が終焉した1970年代後半に入ると、こうした政策もかなり緩和され、爾来宗教的表現に対する寛容性が見られるようになった。(wiki)』ため、現在では、仏教、道教、イスラム教、プロテスタントおよびカトリックの5宗教が公認されているのだそうです。

だからなのかどうか・・・、「涿州万佛霊園」の石像や看板などを見ると、ちょっと支離滅裂な印象を受けます。



熱烈歓迎されましたよ。


涿州万佛霊園の地図。ハート型がいじらしい。

 
かなり広大です。


ここは造成中。まだまだ増えます。


高台から見たところ。

あの世でお金を使えるよう、お墓の前で紙幣(偽物)燃やす風習があります。ここでは安全のため専用施設を作りました。干支に合わせて12個の口があります。


なんだかよくわからないモニュメントです。


干支に対応した像。もちろん12体ならんでいます。


これは仏教っぽい。


これは儒教? 道教?


狛犬じゃないと思うけれど・・・。正面から見ておけばよかった。


仏教っぽいですが、後ろには干支に相当する動物の彫刻があります。


「土地公」とあり、土地の守護神らしいです。


お墓の建て売りのようす。墓石に何も文字が刻まれていないのは、まだ売れていない証拠。


区画ごとにさまざまなタイプが販売されています。


石に魂は入るが、陶器に魂は入らない、という思考があり、陶器製の墓はまったく受けが悪く建て替え中だそうです。


周辺に住んでいるのは農家の人々ですが、この霊園は、北京在住の人向けに販売されているようです。比較的交通の便がよく、墓参りにも都合がよく、地価が安いので、墓地の購入価格も抑えられるというメリットがあります。1平米あたり(小さい墓一基分)20~30万円台だそうです。端的にいえば、急激に人口密度が高くなった北京の人々の墓地を、現在どんどん開発している段階、という具合に考えてよさそうです。

中国でも最近は火葬が推奨され、主流になりつつあるのですが、田舎の方では火葬場の設備が整備されていなかったり、古くからの風習で土葬にすることも少なくないそうです。ですので、もしかすると、この周辺の農家の人々がすんなりこの霊園を利用できるものではないかもしれません。


「涿州万佛霊園」、まだ続きます。