ネット情報ですが、こんなのがあります。
『安心と信頼のある「ライフエンディング・ステージ」の創出に向けた普及啓発に関する研究会報告書』
平成24年4月に経済産業省商務情報政策局サービス政策課サービス産業室から出された報告書です。全体的に見て、私自身が考える世間一般の感覚から大きく逸脱するようなことはないのですが(当然ですが)、改めて現実を突きつけられると、なかなか感慨深いものがあります。

この15ページに「図表II-3-4 各種事前準備のの実態」という表があります。

いわゆる「終活」に関する意識調査で、この上から3つ目の「遺影写真を撮影しておくこと」があります。
見てみましょう。

・遺影をすでに準備している——-2.0%
・現在準備中である—————2.6%

・準備すべきだが、していない—-46.8%

・準備すべきと感じない———-22.9%
・わからない、考えたことがない–25.6%

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写真道場でもずいぶん前から「遺影」撮影をメニューに加えてはいるのですが、まあ、本当に少ないです。
撮影された方々については、それぞれの物語があって、とてもいい仕事にはなっているのですが、とにかく少ない。
少ない中でも、男性は輪をかけて少ない。奥さんに連れられてくるか、よほどな特殊事情があるケースに限られます。
もっとも、他人である我々が口に出して「遺影を撮っておいたら」とは言えない撮影です。
家族でも本人に撮影を薦めることは憚られますし、比較的一般には、本人は撮るつもりでも、家族から「縁起でもない」と拒絶されることが少なくないようです。
こういう意味で遺影は、本人が準備しないだけでなく、家族が準備させない、という事情もありそうです。

ここで翻って、現実のお葬式を思い浮かべると、「遺影」のない葬式は、まずもって考えられません。いくつかの葬儀屋さんに聞いたところでも、遺影のない葬式はまずない。とのことです。

・一般的な方なら写真が全くないということはないので、家族総出で探す、のが一般的。
・老人ホームなどに入居していると、そこのスタッフが写真を撮る機会が多いので、写真がない、という事態にはならない。
・それでも見つからないケースでは、例えばお孫さんの描いた似顔絵を使ったことがあった。

といった現実から考えると、「準備すべきと思わない」22.9%は、いったい何を考えているのでしょう? といった疑問にも答えを探していきたいわけですが・・・・。

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ともあれ、先の調査の話に戻すと、準備している人+準備中は、合わせて約5%(4.6%)。
準備していないが全体の約半数(46.8%)。
準備すべきとさえ思わない+考えたこともないが、約半数(46.8%)。

ですので、20人の内19人の遺影は、本人の関知しないところで、家族・遺族がなんとかしています。していますというよりも、「遺影」を作らなければ(普通の)葬式はできない、という現実があるわけです。

余談ですが、最近の日本では1年にだいたい130万人くらいが亡くなります。
で、遺影写真加工の最大手であるアスカネットでは、「年間約32.5万人の方の葬儀用写真を製作しております。全国約30%のシェアになり、業界トップの実績です。」(IR情報から)とあります。
ぶっちゃけ、日本人の4人に1人は、アスカネットの遺影が使われているわけですね。

アスカネットのサービスは、家族が探し出してきたスナップや集合写真を、葬儀店や会館・ホールなどに設置されているスキャナでデータ化し、それをアスカネットのセンターに集約し、人物をキリヌキ、背景を変えたり、衣装を変えたりすることで、効率的に高品位な「遺影」を画像編集し、そのデータを葬儀店や会館・ホールなどに戻し、そこのプリンタで出力する、というものです。

というわけで、業界事情やらに話を広げる前に、そもそも「遺影」って何? 本当に葬儀に必要なの? という素朴な疑問から入っていきます。

まだまだ、続きますよ。