11月9日、午後2時~、参加者15名で開催しました。

『葬儀写真集の時代』

国立民俗歴史博物館 山田 慎也

江戸~明治時代、著名人の葬儀は絵巻物として記録されています。それは、自宅から葬列が始まり、寺で終わるといった具合に時系列を伴った記録となっています。これが、明治~大正時代に、葬列から祭壇方式に葬儀が変化すると同時に、日本に入ってきた写真および印刷技術を使って「葬儀写真集」に移り変わっていきました。葬儀写真集は、関係者に配布されるだけでなく、販売を目的としたものも数多く作られ、現代に残されています。この葬儀写真集も、絵巻物のように時系列にしたがって、健康な時の本人の写真から、病に臥し、亡くなり、葬儀が執り行われ・・といった具合に構成されているのですが、故人の肖像はあくまでこの時系列の中で本人であることを示されています。これが次第に、一枚の肖像写真が故人を象徴する図像として扱われるようになり、祭壇に「遺影」として飾られていくようになった歴史を、たくさんの実例写真と共に学ぶことができました。山田さんの貴重な「葬儀写真集コレクション」の一部もお持ちいただき、たいへんに珍しいものを拝見することもできました。

現代の葬儀では祭壇の上に一番大きく飾られることが多い「遺影」ですが、もともとをいえば、「位牌」の方が宗教的意味合いが強いものであり、本来は位牌の下に写真はあるべきであった、という話など、目からウロコ。

『明治の家族アルバム』

日本カメラ博物館 古写真蒐集・研究家 井桜 直美

江戸末期に輸入された写真技術があっと言うまに日本中に広まった明治時代。この頃、雨後の筍のごとく日本中にできていった営業写真館で撮影された数々の写真をコレクションされている井桜さん。

日本における写真の創始の話から始まり、メインは明治30年頃、滋賀県大津の梶写真館などで撮影された、とある一家の一連の写真を事細かに観察。そこに写っている女性「きみ(吉子)」の幼少時から結婚、出産まで、まさに「女の一生」を垣間見るような物語を伺いました。

1世紀以上前の、何の縁もない一人の女性ですが、数多くの写真を見ていくことで、他人とは思えない親近感を覚えてしまいました。

トークショーが終わってからも、夜が更けるまで話は尽きませんでした。お二方の話は共に、なかなか聞けるものではありませんので、本当に面白かったです。またやりたいなぁ。